一口法話

思いから行いへ 浄土宗カレンダー令和五年一月のことば

知恩院御影堂へと続く女坂を上りきる手前に仏教詩人坂村真民氏の句碑があります。

そこには氏の有名な 「念ずれば花開く」が刻まれています。

「念ずれば花開く」という言葉の意味は もちろん単純に思い続けていればいつかは夢がかなう」ということではなく、「思いを強く持って継続して努力すればいつか報われる時が来る」と受け止めています。

 

新年、新聞の読者投稿欄を見ても、今年こそはと各人の強い思いが綴られています。そしてその思いを成就せんが為に、具体的に○〇をすると示されています。有言実行の大切さ、難しさは私自身も毎年経験しています。しかしそれでも思いは持ち続けないといけません。

 

「念」という字は今の心とも受け止めることができますが、本来、この今という字は蓋、覆うものという意味です。

心を覆うとはつまり「忘れない」ということです。もちろん忘れていいこともたくさんありますが、私たちは忘れてはいけないことまでついつい忘れがちです。

人間にとって忘れてはいけない大切なことは「世間は無常である、そして人は必ず死ぬこと」や「人から受けた恩」「いつも誰かが見てくれている」等の真理です。

個人的に一月は妻の命日があり、お檀家さんの命日も多く、そして怖い思いをした阪神淡路大震災の発生もありました。

一月が来るたびにとても悲しい気持ちになりますが、苦の経験を思い出すことで、人間的に成長しようと改めて決意することができるのです。

そして成長するための行いをしていけるのです。

 

新しい一年を迎え、確実にこの世を離れる時が近づいていることは明白です。

右記の真実を常に忘れず命ある限り共々に精進したく存じます。